医療用画像処理におけるAIの市場は、今後10年で10倍以上の成長を見込むとも言われている。画像用AIは現在まで80種以上が米FDAの臨床利用許可を得た。米国放射線医会(ACR: American College of Radiology)は会員を対象としたAI使用に関する年次調査を2020年に初めて実施し、その結果を発表した。
学会誌 Journal of the American College of Radiologyでの年次調査結果発表では、調査に回答した1,861名のうち493名(33.5%)が臨床現場でAIを使用していた。放射線科医のAI使用には、施設の規模が大きく影響しており、大規模施設(施設あたりの放射線科医の人数が多い)ほどAIを使用している傾向がみられた。また、AI利用者の約半数(52.0%)は、診断解釈(Interpretation)の向上目的での使用であった。AIの利用領域で多いものは、頭蓋内出血、肺塞栓、マンモグラフィ(乳がん)で、AIを利用していない施設の約20%が1~5年以内でのAIツール導入を検討していた。
著者らは、今回の調査結果から放射線科の臨床現場におけるAI普及率が想定より緩やかであると結論づけている。調査内でAIを使用していない回答者の理由については、大多数(80%)が「メリットがない」というもので、約3分の1(31%)が「費用を正当化できない」または「AI購入の決定権がない」と答えている。また、AI利用者のほとんど(94.3%)が「パフォーマンスの一貫性のなさ(バイアスなど)」を指摘している。その他に「潜在的な生産性低下」や「診療報酬の不足」への懸念も根強かった。一方で、AIに対する信頼感の低さとは対照的に、使用経験における満足感は高く、AIの価値を実感している結果も見られているため、学会ではAIの導入障壁を今後の課題としている。
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