低所得者など社会的弱者が歯を失うリスクが高いことは、以前から知られてきた。それら社会経済的な要素を組み込んだ機械学習によって、歯科検診を受けずとも歯を喪失するリスクが高い人を特定するアルゴリズムが、ハーバード大学歯科医学校のグループによって研究されている。
PLOS ONE誌に掲載されたチームの研究論文によると、関節炎・糖尿病などの基礎疾患情報に加えて人種・教育を含む社会経済的因子を考慮したアルゴリズムを構築することで、歯の完全喪失をAUC 88.7%、機能的歯列の欠如をAUC 88.3%、いずれかの歯の欠損をAUC 83.2%で予測できたとする。これは「歯科の臨床指標のみに依存したアルゴリズムよりも優れていること」を示しており、社会経済的因子が歯の喪失に与える影響が強調された形となる。
ハーバード・メディカル・スクールの23日付ニュースリリース内では、この手法により「世界中あらゆる医療現場において、歯科の専門家ではなくてもスクリーニングできるようになるかもしれない」とグループの代表で同大の口腔保健政策・疫学准教授であるHawazin Elani氏は述べている。このスクリーニングツールが機能することで、自力では歯科検診行動につながらない集団に対して、歯科受診へ誘導できることが期待されている。