眼底写真の網膜血管マップ(RVM: Retinal Vessel Map)を「グレースケール」として色素情報を除くことで、理論的には人種を識別する特徴は残らないと考えられる。しかし、「人種バイアスを取り除こうと試みても、黒人/白人で網膜静脈の人種差をAIが識別できてしまう」という研究成果が発表された。
arXivで公開されている本研究では、未熟児網膜症のスクリーニングを受けた乳児のグレースケールRVMから人種固有の特徴を識別できるか評価している。その結果、構築された畳み込みニューラルネットワークは黒人/白人の乳児をほぼ完全に識別することができた。網膜血管のパターンが黒人と白人で生理学的に異なること、あるいは構築したAIアルゴリズムが「除去した情報と異なる方法で色素情報をセグメント化」していること、などが要因として考察されている。
著者らはどちらの要因にしても、AIモデルは肉眼レベルでは認識できない人種間差を捉え、バイアスの発生リスクは伴い続けると述べている。医療における人種差を「平準化」する難しさは、AIの活用を考える上で最大の課題のひとつとして残り続ける。
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