病理医は手術・検査によって得られた組織サンプルから、ガラス標本を作成し、顕微鏡をのぞいて診断を行う。「病理診断」と呼ばれるこのプロセスは患者当人にとってもあまり意識されることはないが、医学的判断の重要な拠り所であり、実臨床において病理医はまさに黒子的存在である。そんな彼らの聖域においても、AIによる技術革新の波は着実に押し寄せている。
NVIDIAの公表によると、同社Inception programのメンバーであるスタートアップ企業・Prosciaは、深層学習技術を利用したデジタルスライド分析を積極的に進めているという。特に皮膚病変の診断アルゴリズムは高い識別能を誇り、病理医による診断のばらつきを補助できるとのこと。また、同様にInception programメンバーとして病理領域に関わるスタートアップ・SigTupleは、AI顕微鏡を開発をしており、ガラス標本を直接スキャンし結果解釈までを自律して行えるという。既存のスキャナーと比較しても、コスト面での優位性は大きいとのこと。
病理医の診断技術は経験によるものが大きく、同じ標本から病理医ごとに意見が分かれることも少なくない。AIは安定した精度での識別を行えることに併せ、大幅なコスト削減の可能性があることも考えれば、これらの新技術が世界的な病理医不足の根本解決に繋がる期待すらあるだろう。