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NVIDIA Inception programより – 病理学のあり方を変えるAI技術

病理医は手術・検査によって得られた組織サンプルから、ガラス標本を作成し、顕微鏡をのぞいて診断を行う。「病理診断」と呼ばれるこのプロセスは患者当人にとってもあまり意識されることはないが、医学的判断の重要な拠り所であり、実臨床において病理医はまさに黒子的存在である。そんな彼らの聖域においても、AIによる技術革新の波は着実に押し寄せている。

NVIDIAの公表によると、同社Inception programのメンバーであるスタートアップ企業・Prosciaは、深層学習技術を利用したデジタルスライド分析を積極的に進めているという。特に皮膚病変の診断アルゴリズムは高い識別能を誇り、病理医による診断のばらつきを補助できるとのこと。また、同様にInception programメンバーとして病理領域に関わるスタートアップ・SigTupleは、AI顕微鏡を開発をしており、ガラス標本を直接スキャンし結果解釈までを自律して行えるという。既存のスキャナーと比較しても、コスト面での優位性は大きいとのこと。

病理医の診断技術は経験によるものが大きく、同じ標本から病理医ごとに意見が分かれることも少なくない。AIは安定した精度での識別を行えることに併せ、大幅なコスト削減の可能性があることも考えれば、これらの新技術が世界的な病理医不足の根本解決に繋がる期待すらあるだろう。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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