泌尿器科がんのAI技術展望

日本泌尿器科学会2019は、AI技術の存在感をまだ強く感じない印象があった。GoogleのDeep Learningによる前立腺がん画像診断(過去記事)のような、泌尿器科がんのAI技術を紹介する。

がん分子標的治療の学術誌Oncotargetには、核磁気共鳴分光法(NMR)に対しニューラルネットワーク(NN)のひとつ自己組織化写像(SOM)を応用した、アミノ酸などの血中代謝産物による腎細胞がんの早期診断技術が報告されている。早期の腎細胞がんは診断が難しく、バイオマーカーによる診断の可能性が提案されてきた。英国の泌尿器科学術誌BJU Internationalには、2種類のNNモデル、誤差逆伝播法(back propagation)とlearning vector quantizer (LVQ)で尿細胞診を画像解析して尿路上皮がんと良性疾患を鑑別する報告がある。尿中がん細胞の検査は多用されるが、良悪性の境界では解釈に難渋するため、信頼性の高い分析法が期待されている。

2編の論文は臨床のニーズに応えるAI技術の方向性である。泌尿器科は手術支援ロボット「da Vincii」の実用化に取り組むなど先端技術への新進気鋭の風土がある一方、厚労省の報告にもあるように日本では医師不足が指摘される科のひとつだ。AI技術に造詣のある人材の拡充が今後の課題かもしれない。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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