男性不妊症(不妊の原因が男性側にあるもの)も少なくないという事実について、世の中の認識が近年進んできた。精巣静脈瘤という、陰嚢内で精巣に連なる静脈がこぶ状に太く蛇行した状態が、男性不妊の大きな原因のひとつとして、医学的には注目されている。ただし、その重症度と妊娠可能性の関連を予測する臨床指標やマーカーは確立されていなかった。
学術誌BioMed Research Internationalには、精巣内のカンナビノイド系(ECS)と呼ばれる遺伝子発現に注目し、ニューラルネットワークを利用して妊娠可能性を予測する研究が収載されている。実験動物で進められた本研究は、やがてヒトにおいても、精索静脈瘤が関与する不妊症の診断と妊娠可能性に利用できる予測モデルの開発に繋がる可能性を示唆している。
これまでの精索静脈瘤の臨床重症度分類は、必ずしも精液サンプルの質と相関しないといわれ、妊娠可能性との関連には未知の部分が大きかった。そのため臨床現場では、男性不妊に関して重症度分類の解釈に難渋する側面もあり、本研究の発展が期待されるところである。以前に紹介した、体外受精の成功率を高めるDeep Learning(過去記事)など、AIと生殖医療との関わりについては人々の期待も大きく、今後も注目してゆきたいトピックスである。