心的外傷後ストレス障害(PTSD: Post Traumatic Stress Disorder)は、命の危険を感じるような強いショック体験から時間が経ってもなお、恐怖などに悩まされる精神疾患である。戦場から戻った軍人や震災経験者、犯罪被害者でみられることが多い。面接や自己申告による診断方法には偏りがあり、何らかの客観的な指標が求められてきた。
Medical Xpressの報道によると、ニューヨーク大学医学部の研究グループが、AIによる音声分析からPTSDを診断する方法を発表した。学術誌Depression and Anxietyに収載の論文は、イラクやアフガニスタンから帰還した米国退役軍人のPTSDを研究対象としている。機械学習手法ランダムフォレストで、患者の話し方の特徴(遅い、変化が少ない、単調である、活気がない)を1時間の面接から分析し、PTSD診断で89%の正解率を達成したという。
PTSDのメカニズムは解明途上であるが、同研究は、外傷のイベントが感情や筋肉の緊張を処理する脳の回路を変えてしまうという理論を基礎としている。研究グループの精神科医は「音声分析は、安価で遠隔診断が可能で、なにより患者に負担が少ない。将来的な自動診断システムの有効な候補となり得る」と述べている。