ADHD(注意欠陥多動性障害)は、落ち着きのなさや集中力の欠如を主体とする発達障害のひとつ。問診や症状の推移、神経心理学的検査などを組み合わせて診断を行っている。したがって、単一で診断に結びつく客観的な評価尺度はなかった。
Journal of Clinical Medicineに19日公開されたドイツからの研究では、脳波検査単独からADHDを識別する深層学習アルゴリズムを構築している。事象関連電位と呼ばれる、内的・外的刺激に応じた電気生理学的反応を測定したもので、チームのアルゴリズムでは、健常者とADHDを持つ患者とを最大83%の正確性で識別できたという。一方、ADHD患者におけるサブタイプに関しては、AIを利用して互いに識別することはできなかった。
ADHDと脳波については非常に多くの先行研究があり、疾患固有の脳波特性もいくつか指摘がされてきたが、現時点で脳波検査は他疾患を除外する目的での利用が主となっている。今回の研究成果は、深層学習アルゴリズムによって脳波からADHDを診断できる可能性を示唆するものではあるが、研究者らも論文中で述べるように「今後、信頼性の向上のためには多くの追試が必要」であることは間違いない。