トリアージとは、患者の疾病・外傷などの重症度に基づいて行われる「選別」のことで、特に災害時など負傷者多数の現場において重要となる観点だ。戦場における(負傷兵に対するトリアージを含めた)救護活動は、これまで衛生兵の経験と直感に依存するものであったが、AIの台頭はこのあり方を大きく変えようとしている。
米メディア企業Atlantic Mediaが運営する「Defense One」の報道では、米軍外科研究部門を率いる医師Jerome Buller中佐へのインタビューを紹介している。兵士に装着した生体センサーから得られるデータに、個人の医療データやトレーニングデータ、ARレンズを通した視覚情報などを組み合わせることで、衛生兵は十分に安全な距離を取ったまま、戦場における兵士の健康状態を正確に評価できるようになるという。このことは、実際に患者を診察する前に詳細な情報を取得できることを意味し、戦場におけるトリアージをより効率的に実施することができるようになるという。
米軍は高度に構築された外傷データベース(DOD trauma registry)を持ち、特定の部位に特定の外傷を負った場合の転機についても非常に豊富な参照情報がある。リッチなデータベースと機械学習技術が戦場におけるトリアージの質的転換をもたらそうとしているが、限られたリソースを最大限有効活用するこの技術は、医療現場における患者モニタリングと介入レベルについての医学的な意思決定と本質を同じくしており、一般市民にとって必ずしも「別世界の技術発展」というわけではない。
過去記事「戦場の外傷患者を救うAIテクノロジー」