医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例疾患診断へのAI活用事例英研究グループ 血液検査から脳腫瘍をスクリーニングするAI技術を開発

英研究グループ 血液検査から脳腫瘍をスクリーニングするAI技術を開発

ストラスクライド大学とエディンバラ大学、英企業ClinSpec Diagnosticsの共同研究チームは、赤外分光法と呼ばれる既存の技術にAIを利用し、2万に及ぶ血液中化学物質から脳腫瘍を指し示すものを抽出した。このスクリーニングテストにより、のちに脳腫瘍と診断される患者の82%を正しく特定することができたという。

欧州のバイオテック産業を取り扱うデジタルメディア・Labiotech.euの報道によると、この新しい脳腫瘍検査では、腫瘍の存在を識別するために必要となる「脳画像スキャン」の実施優先度を評価できる点が指摘されている。実診療においては、患者の症状のみから脳腫瘍を積極的に疑うことは容易ではなく、英国における標準プロセスとしても、診断までに複数回の受診と2ヶ月以上の時間を要していたという。

研究を率いたエディンバラ大学のPaul Brennan氏は「頭痛は脳腫瘍の兆候のひとつと言えますが、実際は他に原因のあることの方が多く、頭痛のある人全員を脳スキャンに送ることは現実的ではありません」と話す。英国を含む欧州においても、CTやMRIなどの画像検査機器の数は十分でなく、依然として日常診療レベルの検査とはなっていない。新しいスクリーニング手法による患者の優先付けは、脳画像スキャンの検査待ちによる診断の遅れを回避する、画期的な技術となる可能性がある。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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