メガネ型ウェアラブル端末「スマートグラス」は、2012年に製品テスト開始のGoogle Glass(過去記事)で耳目を集めた。しかし、撮影機能によるプライバシーの懸念などから、Google Glassは一般消費者用の開発を中止。普及が進まず流行は下火となる。一方、製造現場ではAIやIoTによるスマート工場化で、スマートグラスの活用が模索された。また医学領域でも、手術中にハンズフリーで患者情報を視野に投影するような活用法で需要が続いている。
テックメディアSilicon Canalsでは、視覚障害者向けAIを提供するオランダ発スタートアップ「Envision」の新製品を紹介している。Google Glassに搭載される同社のAIは、周囲の風景・人の顔・食品ラベル・手書きの文章などを60以上の言語で認識し、状況や内容を音声で読み上げてくれる。今年3月、カリフォルニア州立大学ノースリッジ校(CSUN)主催の障害者アクセシビリティに関する世界最大級の国際会議で同製品は発表された。
AIに職が奪われるという昨今の議論には、AIによる人間の能力拡張の観点が不足する。ハンディキャップを抱えた人々をサポートするAIの多面的発達は、さらなる就労支援を切り拓く可能性もある。現在Google以外にもAmazon・Microsoft・Facebookがスマートグラスの開発を行っており、普及の機運が再び高まっている。Envisionの取り組みが視覚障害者支援の未来を形作ることを期待したい。