新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行するなかで、医療資源の枯渇から治療を優先的に受けるべき患者の選別・トリアージが迫られるケースが増えると指摘される。しかし、最前線で治療にあたる医師にその選別を行わせるには、意思決定の要素が複雑で負担が大きい。中国の研究者グループが血液サンプル分析でCOVID-19患者の生存率を予測するAIツールを発表している。
TheStarの報道によると、湖北省武漢にある華中科技大学(HUST)と同済病院の研究グループが、COVID-19患者400名以上で入院日に採取された血液検体から死亡リスクを予測する機械学習モデルを作成した。成果は非査読研究のプラットフォームMedrxiv.orgで公開中である。COVID-19の予後予測因子として血中の3つのバイオマーカー、LDH・hs-CRP・リンパ球の解析に基づくモデルという。患者の生存可能性を約16日前に90%以上の精度で予測できると同研究グループは主張している。
同研究は、集中治療室や人工呼吸器のような限られた医療資源の分配など、厳しい選択に迫られた現場の医師の意思決定を補助できる可能性がある。しかし、一方でAIが生死の決定にどの程度関与すべきか、多くの倫理的課題を抱えている。AIによるトリアージが一般に受け入れられるか、世界的大禍を過ぎた後にどのような世論が形成されるだろうか。