米ジョンスホプキンス大学などの研究チームは、「COVID-19のパンデミック下に腎移植を行うこと」のリスクとベネフィットを探るシミュレーション研究を行った。研究成果はAmerican Journal of Transplantationに9日公開された。
チームの研究論文によると、多様な患者ケースに対しパンデミック下にも迅速な腎移植を行う場合と、パンデミックが収束するのを待って施行する場合とでの比較を行っている。機械学習モデルによって構築されたシミュレータでは、パンデミックの特徴(感染リスクや致命率)と移植遅延の程度がリスク/ベネフィットに対して最も大きな影響を与えていた。実際のシミュレータは公開されており、必要な項目を選択することで、迅速な腎移植施行と待機的施行とでどれだけ患者生存率に差が生まれるかを視覚的に捉えることができる(Kidney Transplant in the Context of the COVID-19 Pandemic)。
COVID-19パンデミック下においては、あらゆる臨床的意思決定に深刻な問題が生じた。実際、予定されていた多くの腎移植が延期となり、世界的に腎移植施行数の減少がみられている。この主たる理由は、リスクに対する理解が不十分であること、および意思決定に至る参照情報が不足していることにある。この種の支援ツールは、意思決定の最適化によって患者予後の改善に直接資する可能性があることから、臨床現場からの期待も大きく、疾患範囲の拡大と知見集積が強く望まれている。