生活習慣病の2型糖尿病と異なり、自己免疫などの理由でインスリンが分泌できず高血糖になる「1型糖尿病」というタイプがある。ほとんどの1型糖尿病患者はインスリンを自己注射で補っている。しかし、インスリン注射のコントロール不良で、合併症の原因となる高血糖、ときに致命的となる低血糖、それぞれのリスクに患者はさらされる。米オレゴン健康科学大学(Oregon Health & Science University)のグループから発表されたAI研究では、内分泌代謝内科医に近いレベルでインスリン投与量を調整するアルゴリズムが設計された。
学術誌 Nature Metabolismに発表された同研究は、血糖値の持続モニタリングとワイヤレスインスリンペンから収集したデータを「DailyDose」というスマートフォンアプリとペアリングして、インスリン投与量の調節を患者に案内する。k近傍法を基礎とした手法で訓練されたアルゴリズムは、インスリン投与量調節において専門医と67.9%一致し、低血糖の発生を回避するために十分な安全性を示すことができた。
次世代の糖尿病治療デバイスとして期待されるスマートインスリンペンは以前に紹介した(過去記事)。上記アルゴリズムは専門医の技術との相関を示した臨床研究として、この領域では価値が高い。患者にとって専門医受診は数ヶ月間隔が一般的であり、微細な体調変化を相談するには時間差が生じてしまう。専門医と相関性の担保されたAIでの即時性の高いインスリン投与量調整は、1型糖尿病患者の長期管理において予後改善につながることが期待される。