医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例乳がんの取り残しを防ぐAI技術 - Perimeter Medical Imaging AI社

乳がんの取り残しを防ぐAI技術 – Perimeter Medical Imaging AI社

乳房のような軟組織が光を透過/散乱する性質から、内部組織の画像を構成して立体モデルを生成する「光断層撮影」という検査法がある。中でも赤外線を利用する「光コヒーレンストモグラフィー(OCT: Optical Coherence Tomography)」は空間分解能の高い断層画像が得られるため、医療領域での応用が進んできた。Perimeter Medical Imaging AI はトロントとダラスを拠点とするベンチャーで、OCT画像プラットフォームの商業参入を計画し7月6日にトロント証券取引所のベンチャー取引所に新規上場している。

Perimeter Medical Imaging AI のニュースリリースによると、同社の開発するOCT画像処理ソフトウェア「ImgAssist AI」は乳房組織の画像データを収集し機械学習を応用することで、乳がんにおける乳房温存手術の際に、がんの残存をリアルタイムで識別する。テキサス州の協力医療機関で行われる臨床研究は「ATLAS AI」プロジェクトと呼称され7月15日に発表された。病理データとの照合などから現在の乳房温存手術の標準手技と手術成績を比較し、再手術率への影響を評価する。

同社のようなOCT画像技術の応用が進めば、手術中に切除された乳房組織の病理標本の表層から1-2mm直下の微細構造を正確に可視化できるようになる。術中に行う顕微鏡による迅速病理検査に匹敵するパフォーマンスと、それをさらに上回る即時性を示すことができれば、外科医にとってはその場ですぐに腫瘍全体が摘出できているか判断できる画期的な技術革新となる。Perimeter Medical Imaging AI の株式市場でのティッカーシンボルは「PINK」で、乳がん啓発のピンクリボンに由来しており、乳がんとの戦いを支援する同社の姿勢を示している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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