医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例AIを用いた新しい設計思想で医療画像機器へのサイバー攻撃を防ぐ

AIを用いた新しい設計思想で医療画像機器へのサイバー攻撃を防ぐ

CTやMRIのような画像検査装置はホストとなるPCから制御されている。そこに異常な指示が入力された場合、過剰な放射線被曝など患者に有害な脅威がもたらされる可能性がある。イスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン大学の研究グループは「異常な命令から医療機器を保護するための二重層設計」という研究成果を8月26日に開催された AIME 2020で発表している。

ネゲヴ・ベン=グリオン大学のニュースリリースでは、同プロジェクトを紹介している。研究を主導するTom Mahler氏によると、2種類の異常な医療機器への命令を検出するアルゴリズムが設計された。1つ目の層では「通常の100倍の放射線量を与える」などあり得ない異常値を検出するコンテクストフリー層(CF層)、2つ目の層では正常値だが「成人向けの指示が乳児に適用されている」など特定の状況の異常な命令を検出するコンテクストセンシティブ層(CS層)が用意された。8,277例のCTへの命令を用いて機械学習で強化されたアルゴリズムにより、CF層単独での精度F1スコアが71.6%であったのに比し、CS層を組み合わせると異常命令の検出精度は82-99%に向上した。

医療機器に対するサイバー攻撃の潜在的なリスクはことあるごとに指摘されてきた。同研究はそのような脅威を防ぐ可能性とともに、技師の設定ミスといったヒューマンエラーや、ホストPCのソフトウェアバグなどにも対応が可能である。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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