肝細胞がん(HCC)の初期治療における実際の選択と、現在広く利用されているBCLC病期分類に基づく推奨項目の間には現実的な不一致がある。韓国・ソウルに所在する蔚山(ウルサン)大学校の研究チームは、有効な初期治療オプションと全生存期間を明示する「機械学習ベースの臨床的意思決定支援システム」の開発に取り組んでいる。
Nature Researchが刊行するオープンアクセスの電子ジャーナル・Scientific Reportsにて先週公開されたチームの研究論文によると、1,021人のHCC患者における診療記録を利用しこのシステムを構築したという。初期治療方法や生存状況に加え、治療開始前変数など61項目を抽出し、実際のモデル作成にあたっては21項目を利用した。各治療オプションに対して計7つの生存予測モデルを開発し、妥当性の検証試験においては、当該システムによる治療法の推奨と生存予測の点で優れたパフォーマンスを示したとのこと。
本研究は単施設研究で一般化可能性が限定的であること、移植術やラジオ波焼灼療法など一部の治療方法についてはサンプルサイズが非常に小さく解析結果が不安定であること、治療法選択の重要な因子である患者の嗜好が評価されていないこと、など明確な研究の限界を伴う。一方で、疾患単位の意思決定支援ツールにはAIの導入余地が大きく、今後も種々の検討が進められることは間違いない。本研究もその一例として今後のエビデンス構築に資することが期待されている。