耳の感染症や鼓膜の障害を診断する際、耳鏡という古典的な検査手法が頻用されているが、ここには歴史的に大きな変化はなかった。米ウィスコンシン州マディソン拠点のスタートアップ Otologic Technologies が開発するデジタル耳鏡は、合成画像・診断プログラム・遠隔診療で従来の診断プロセスを変革しようとしている。
Wisconsin State Journal では、Otologic社の特集記事を報じている。デジタル耳鏡で撮影された3-5秒の動画を同社のプログラムにアップロードすると、その中から照明条件やピントが適切な静止画フレームが検索され、繋ぎ合わせて1枚の画像を合成し、明度調整や強調処理が実行される。得られた条件の良い画像を、同社のデータベースに照会することで14種の耳の異常を自動診断する。
同社の技術は、共同創設者で耳鼻咽喉科専門の Aaron Moberly博士らによる先行研究を発端とする(学術誌 SPIE Medical Imaging 2017 収載)。かかりつけ医や小児科医が耳の疾患を不得手とする可能性の中、システムは非専門医を上回る診断精度を謳う。低所得国やCOVID-19での移動制限地域など、遠隔医療での使用も想定しながら、Otologic社は来年後半のFDA認証への申請を予定している。同種の技術については、ジョンズ・ホプキンス大のスマート耳鏡を紹介した過去記事も参照いただきたい。