パーキンソン病はふるえや緩慢な動作、筋の固縮、姿勢保持障害などを主症状とする神経変性疾患で、日本においては厚生労働省の指定難病に該当する。このパーキンソン病を運動症状からではなく、眼底の画像解析によって初期徴候を捉えようとする試みが、米フロリダ大学の研究チームによって進められている。
権威ある学術団体・北米放射線学会(RSNA)のプレスリリースとして公表された同研究では、特殊なレンズを搭載したスマートフォンによって眼底画像を撮影し、このデータベースを活用してサポートベクターマシン(SVM)をトレーニングしたという。導いた最良のAIモデルは網膜の微小血管変化を補足することで、パーキンソン病を高精度に識別できる事実を明らかにした。
従来の視触診を中心とした運動症状からのパーキンソン病診断では、中枢神経系への重大な変化を来した後にのみ有効となることが多く、疾患プロセス後期へのアプローチには介入的限界も指摘されていた。本研究は高度な専門機材を要さない新しい早期診断手法を確立し得る点から、革新的研究成果となる可能性がある。またこのアプローチは、アルツハイマー病や多発性硬化症といった他の神経変性疾患における拡張可能性も示唆するものでもある。意欲的な読者からの挑戦にも大いに期待したい。