パキスタンは小児定期予防接種(Routine Childhood Immunization: RCI)の接種率が極めて低い国のひとつに挙げられ、多くの健康問題につながっている。低中所得国(LMICs)に属する同国では、ワクチンに対する意識の欠如や誤った情報、親のスケジュール忘れなどの問題構造に対して、革新的で費用対効果の高い対策が望まれている。先進国の公衆衛生プログラムでは、RCI接種率の改善にモバイルアプリやSNSが効果的と示されてきた。一方、パキスタンのようなLMICsにおいても同様の介入プログラムが有効か、検証が必要とされている。
JMIR Research Protocolsには「AIベースのスマートフォンアプリによるパキスタンの小児予防接種率改善効果」について、現在進行中の研究プロトコルが紹介されている。モバイルアプリによってRCIに関するテキスト・音声・ビデオ・写真のメッセージが親たちには提供され、予防接種のスケジュールが通知される。それらの介入によって生後10週目と14週目のRCI接種率が改善されるか検証される。パキスタンの携帯電話加入者数は2020年5月時点で1億6600万人、同国でスマートフォンユーザーの95%が利用するAndroidプラットフォーム上でアプリは開発されている。
同研究のプレトライアルは2020年2月に実施され、現在はランダム化比較試験の参加者登録が進行中である。COVID-19のパンデミックと隔離施策によって、LMICsのRCI接種率はさらに悪化したといわれている。同研究から導き出される成果はパキスタンの子どもたちの未来だけでなく、同じような課題を抱える諸国でも重要な役割を果たすだろう。