米オハイオ州クリーブランドに所在するケースウェスタンリザーブ大学などの研究チームは、口腔がんの治療法選択を患者ごとに個別最適化するためのAIシステム開発に取り組んでいる。中心となる研究センター・CCIPDは、特にがん治療分野を中心として60を超える特許を保有するなど、精密医療におけるAI活用の先導的地位を確立している。
研究チームは6日、同大学公式ウェブサイトを通じ、米国立がん研究所(NCI)から5年間で330万ドルの研究助成を受けて、今回のシステム開発を加速させることを明らかにした。チームのテクノロジーは高度なコンピュータビジョンおよび機械学習技術に基づくもので、デジタル化された口腔がんの組織スライドから「がんと免疫細胞、および細胞間の空間パターン」を認識する。ここから、がんの悪性度や手術適応、化学療法および放射線治療の必要性などを識別するAIの開発に結びつけている。
これまでの治療法選択は限られたパラメータに基づく、比較的大枠での分類であったため、手術単独療治療が適応となる群にも、本来は放射線治療を加えるべきサブセットが一定数混じることなどが問題となってきた。口腔がんは米国におけるがん罹患の3%を占め、世界では年間40万人の新規症例が報告されている。チームの新しいAIシステムが潜在的に果たす役割は大きく、治療戦略策定を根本から書き換えるものとなる可能性もある。