免疫チェックポイント阻害薬はがんに対する薬物治療選択肢として普及が進む。その治療は従来の化学療法では治療が困難であった患者らに恩恵を与えている。しかし一方で、免疫療法の効果が乏しい人、さらには第3のカテゴリとして免疫療法によって病勢増悪や余命短縮などの弊害を受ける可能性のある「ハイパープログレッサー(hyper-progressors)」と呼ばれる患者群が注目されている。
ケース・ウェスタン・リザーブ大学の研究チームは以前から、非小細胞肺がん(NSCLC: non-small cell lung cancer)において、免疫チェックポイント阻害薬で「恩恵を受ける患者群」をAIによるCT画像解析から予測する研究を行っていた(過去記事2019/11/28)。同大学の4日付ニュースリリースによると、その研究グループから「免疫療法で病勢が過剰進行する患者群を予測するAI研究」が学術誌 Journal for ImmunoTherapy of Cancerに発表されている。同研究ではNSCLC患者109名のCT画像にもとづく機械学習アルゴリズムによって、治療の恩恵を受けられず病勢増悪してしまうハイパープログレッサーの患者群をAUC 0.96の精度で識別することができた。全生存期間についても、同手法で識別されたハイパープログレッサー群の患者はそれ以外の群よりも有意に短い生存期間を示した。
がん免疫療法による弊害が危惧される一部の患者を識別するバイオマーカーが確立されていない現状の課題に対して、同研究のような画像解析からの非侵襲的なAI手法によって「免疫療法を回避すべき潜在的な患者を把握できる可能性がある」と筆頭著者のPranjal Vaidya氏は述べている。同研究が前向き研究へ発展し、免疫チェックポイント阻害薬のより良い適応患者の解明が進み、治療による弊害を積極的に避けられるようになるかもしれない。