マサチューセッツ総合病院(MGH)、ハーバード公衆衛生大学院などの研究チームは、ゲノムデータ分析によって13の「新しいアルツハイマー病遺伝子」を特定したことを明らかにした。また、同研究内では、アルツハイマー病とシナプス・ニューロン・神経可塑性等の間に「新しい遺伝的リンク」を確立しており、未だ積極的治療手段の得られていない当該疾患において、新たな治療薬の開発に繋がる成果として大きな注目を集めている。
MGHがこのほど行ったプレスリリースによると、この研究ではヒトゲノムの全配列を調べ、これまでフォーカスを受けなかった「稀な」ゲノム変異を評価できるようにすることで得られた成果だという。30億塩基対に及ぶゲノムDNAのうち、ヒトは5000万から6000万の遺伝子変異を有し、そのうち77%が稀なものとなる。これまで見過ごされてきた遺伝子バリアントを明らかにするため、アルツハイマー病と診断された患者を含む605の家族、2,247名(および無関係な個人1,669名)のゲノムに対して全ゲノムシーケンス分析を行った。これによって、これまでアルツハイマー病との関連が指摘されていない13の新たな遺伝子変異が特定され、驚くべきことにこれらの遺伝子変異はシナプスの機能、ニューロンの発達、および神経可塑性との有意な関連を示していた。
研究チームは今後、3次元細胞培養モデルと脳オルガノイド(多能性幹細胞から人工的に導いたミニチュア器官)を利用し、今回特定した遺伝子変異がニューロンに挿入された際「実際に何が起こるか」を検証する予定という。世界的な高齢化の進展によって急速に影響度を高めるアルツハイマー病において、その治療管理を激変し得る極めて重要な研究成果と言える。
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