慢性腎臓病(CKD)において、腎臓の温存率など予後を予測する指標として、腎生検標本から「間質線維化と尿細管萎縮(IFTA: interstitial fibrosis and tubular atrophy)」の評価が行われている。しかし、IFTAの評価は病理医によるばらつきがあるため、より客観的で定量的な評価手法が模索されている。
ボストン大学メディカルスクールのニュースリリースによると、同大のグループは「ディープラーニングで腎生検病理標本画像からIFTAの定量化」を可能とするAIツールを開発している。研究成果は学術誌 American Journal of Pathologyに収載された(全文はmedRxivのプレプリント版を参照)。オハイオ州立大学が有する腎病理画像データセットを利用し、5人の腎臓病理学者によるIFTAスコアからディープラーニングモデルが設計された。モデルの性能はKPMPという別プロジェクトの画像データで検証されている。結果としてIFTAグレードの予測精度は前者データセットで71.8%、KPMPで65.0%であった。
ディープラーニングによる評価アプローチは、腎障害の定量化を通して病理学的診断の補助を可能にする。論文著者のKolachalama博士は「AIモデルによる自動スコアリングは、臨床現場でのセカンドオピニオンツールとして役立つ。このアルゴリズムは他の臓器でも線維化の評価に焦点を当てた研究も可能にするかもしれない」と語っている。
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