医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例妊娠高血圧腎症のAI診断で命を救う - ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン発のプロジェクト

妊娠高血圧腎症のAI診断で命を救う – ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン発のプロジェクト

妊娠高血圧腎症(子癇前症)は世界中で毎年5万人の妊婦と50万人の出生児の死亡を招き、500万人の未熟児出産に影響しているという試算がある。アイルランドのユニバーシティ・カレッジ・ダブリンでは、妊婦の血中バイオマーカー検査と機械学習によるリスク評価を組み合わせ、妊娠高血圧腎症の正確な早期診断と、患者の転機を予測する「AI_PREMie」という次世代の検査法が開発されている。

The Irish Timesでは、研究グループへのインタビューでプロジェクトを紹介している。リーダーのPatricia Maguire教授は、妊娠高血圧腎症の妊婦の診察経験から「血中バイオマーカーが早期警告システムとして機能する可能性」を検討し始め、健康な妊婦との間で血小板数に差がある点から着想を得たという。チームのアイディアはアイルランド科学財団の「AI for Spcietal Good Challenge」に採択され、研究が次の段階へと進んだ。AI_PREMieはアイルランドの3大産科病院で臨床試験が開始され、アイルランドの全出産の50%までを試験範囲としてカバーする。

Maguire教授は「AIは人工知能ではなく拡張知能を意味するべき」として、強力なツールが臨床医の知性を増強してより良い判断ができるようになって欲しいと考える。同氏はインタビューに対し「この子を生むべきか、緊急帝王切開するべきか、といった臨床医の重要な判断をAI_PREMieが助けることを想像すると鳥肌が立つ。研究に協力してくれた妊娠高血圧腎症の妊婦には、子どもを失ったにも関わらず、それが他の誰かに起きて欲しくないという想いで関わってくれた人たちがいる。世界中でこの検査を必要とする全ての人に届けるのが大きな夢だ」と語った。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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