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パーキンソン病患者への脳深部刺激療法の長期有効性

米国では約100万人がパーキンソン病の治療を行っており、毎年新たに6万件の新規症例が報告されている(参照統計)。脳深部刺激療法(DBS)は脳内に深部電極を留置し、標的領域の電気刺激によって異常な神経活動をコントロールする治療法である。我が国においても2000年に保険適用となり、主にパーキンソン病に伴う不随意運動(ジスキネジア)に対する外科的治療として普及している。

仏グルノーブル・アルプ大学の研究チームは、DBSがデバイス留置後15年という長期の経過によっても、有効な効果を示し続けていることを明らかにした。研究成果は2日、Neurologyから公開されている。研究者らはDBSの導入されたパーキンソン病患者51名を調査し、15年以上前のデバイス埋め込み前と比較し、ジスキネジアの経験時間が75%減少し、ドーパミン調節を目的とした投薬は51%減少していることを確認した。

Neurologyのプレスリリースによると著者らは「パーキンソン病自体は進行を認め、一部の症状は治療抵抗性にさえなっているにも関わらず、研究参加者らは生活の質を維持することができている」とし、治療法の長期有効性を強調する。また研究チームは、より多くの人々で長期間の検証を行うことも明らかにしている。最近では、米ラッシュ大学医療センターが自宅での脳深部刺激療法(DBS)を可能とするプラットフォームを立ち上げて話題となるなど、技術革新に伴う古典的治療への効果検証と再評価、機能拡張が進んでいる。

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