医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究適切なワクチン配分へ - 意思決定分析モデルによる最適割付

適切なワクチン配分へ – 意思決定分析モデルによる最適割付

新型コロナウイルスワクチンにおける配分戦略は各国において大きく異なるが、戦略間においてCOVID-19罹患率や死亡率、時間経過に伴う人種・民族別分布との関連などを仔細に検証した研究成果はこれまでなかった。米三大健康保険システムの一つであるカイザーパーマネンテはこのほど、ワクチン配分シミュレートによって「最も効率的なワクチン配分戦略」を特定する研究結果を公表した。

JAMA Health Forumから発表された同研究によると、2021年1月3日から6月1日までに収集された米成人健康保険加入者データを利用したという。無作為に分割した訓練データセットと検証データセットを用い、COVID-19感染リスクモデルと入院リスクモデルを開発し、内部での検証を実施した。仮想的なワクチン配分戦略としては、1. ランダム配分 2. 米国疾病管理予防センター(CDC)の策定した配分 3. 年齢ベースの配分 4. 感染リスクベースの配分 の4つで、2020年5月1日から2020年12月31日までのCOVID-19関連の入院を対象とし、250回のシミュレーションで月ごとにランダムに順列化し、人種・民族と近隣窮乏化指数によってワクチン配分を経時的に評価した。

結果、CDC戦略や年齢ベースの戦略と比較して、リスクベースの戦略がCOVID-19による入院や死亡、家庭内感染における最大の推定削減量と関連していたほか、ヒスパニック系および黒人の患者がプロセスの早い段階で接種される割合が高いことが推定された。このシミュレーションモデリング研究は「高い感染リスクを持つ集団から順に接種させることの有効性」を明らかにしており、今後の配分戦略策定への強力なエビデンスとして注目を集めている。

関連記事:

  1. WhatsAppのAIチャットボットによるドバイのコロナワクチン予約
  2. テクノロジーはCOVID-19ワクチン接種率を高められるか?
  3. Twintの活用 – 新型コロナワクチンに対するインド国民の感情分析
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事