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肺移植の拒絶反応を嗅ぎ分ける電子の鼻

肺移植患者では、約50%が移植5年以内に慢性的な拒絶反応や機能不全(CLAD: chronic lung allograft dysfunction)に至り、主要な死亡原因ともなる。また、免疫抑制剤の有効な調整、再移植の実施判断等には早期の機能不全予測と診断が重要となる。しかし現状でCLADの診断には、肺機能の低下を経時的に確認するため数ヶ月の観察期間を要することもあり、そのタイムラグはひとつの課題となっている。

欧州呼吸器学会(ERS)の国際会議において、オランダ・エラスムス大学医療センターのグループから「電子鼻(eNose)により肺移植患者のCLADを検出する研究」が発表されている(抄録番号OA2914)。同研究は91名の肺移植患者を対象として行われた。eNoseの基本原理は、呼気に1%ほど含まれる揮発性有機化合物(VOC)を検出するセンサーに基づき、VOCのパターンに対して機械学習アルゴリズムが肺疾患を特定するというもの。検証の結果、肺移植後の安定した患者とCLAD患者を87%の精度で識別することができた。

この研究成果は「肺移植におけるリアルタイムな拒絶反応検出に、eNoseとAI技術が有望」であることを示している。研究グループでは今後、拒絶反応の中でも病態が異なる閉塞性細気管支炎と拘束型移植片症候群を区別したいとする。さらには、急性拒絶反応や感染症など、他の肺移植合併症にも応用できるか調査範囲の拡大に取り組んでいる。

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