フェイスシールド内に貼り付けたスライドガラスに向かい、「あー」と言うだけで新型コロナウイルス感染が識別できるようになる。米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究チームは、呼気検体を利用したSARS-CoV-2の新しい高精度識別手法を提案している。
Light: Science & Applications(光学領域の基礎研究/応用研究を取り扱う査読付きオープンアクセスジャーナル)からこのほど公開されたチームの研究論文によると、細胞観察に利用される空間光干渉顕微鏡(SLIM)を用い、ウイルス種の識別を可能とするAIシステムの構築に成功したという。蛍光染色したSARS-CoV-2粒子画像およびSLIM画像からアルゴリズムをトレーニングすることで、ラベルのないSLIM画像からウイルスを高精度に識別できるようになった。AIは、SARS-CoV-2と、H1N1(インフルエンザA)、HAdV(アデノウイルス)、ZIKV(ジカウイルス)などの他ウイルス性病原体とを識別することを学習しており、前臨床試験では、SARS-CoV-2の検出・分類の成功率が96%と極めて有望な成果を上げている。
新型コロナウイルス感染症の診断およびスクリーニングには、迅速かつ正確で、単回施行あたりのコストが低い検査手法が求められてきた。現時点でPCR検査に匹敵、あるいは凌駕する一般検査は得られていないが、本研究成果は全く新しい画像検査手法として実用化される可能性を示しており、業界は大きな期待をもって成り行きを見守っている。
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