がん細胞から治療反応を予測

近年、AIによる個別化医療の加速には目を見張るものがある。AIおよびデータサイエンス技術の発達は、大量の複雑なデータを適切に分析することを可能とし、臨床医による「より個別化された治療」の提供実現を通して、患者予後を改善することができる。米ジョージア工科大学の研究チームは、卵巣がんにおける「がん細胞特性」から、治療反応を予測するAI研究を推進している。

Journal of Oncology Researchからこのほど公開されたチームの研究論文によると、米国立がん研究所が保有する499の独立した細胞株のデータを用い、15種類の異なる機械学習モデルを構築したという。アンサンブル学習によって、がん細胞株の遺伝子発現プロファイルと、過去に観察された治療反応との関連から、種々の抗がん剤に対する効果予測アルゴリズムを導いた。これらを用い、23人の卵巣がん患者において、7種類の化学療法剤を含む臨床データセットで検証したところ、モデルの予測精度は91%という高精度を達成している。

ジョージア工科大学による公式リリースの中で、研究を率いたJohn F. McDonald氏(同大学統合がん研究センター所長)は「より多くの種類のがん患者を対象として、さらなる検証を行う必要があるが、卵巣がん患者における薬物反応を90%の精度で予測できるという予備的結果は、非常に有望だ。個々の患者に最適な抗がん剤治療を正確に予測できる日が来ることを期待する」と述べる。

がん細胞は高度に統合されたネットワークでもあり、臨床的には同じ特徴を示す同種の腫瘍であっても、分子レベルでは全く異なる可能性があり、治療反応の正確な予測は困難を極めてきた。本研究のアプローチは、婦人科腫瘍領域における精密医療を加速させる一例としても、業界からの関心を集めている。

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The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。

1. 岡本 将輝
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(University College London)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員を経て、SBI大学院大学客員准教授、東京大学特任研究員など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. 杉野 智啓
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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