国際的な高齢化を背景として、「加齢黄斑変性症」は視覚障害の主要原因となっている。網膜の画像検査に光干渉断層計(OCT)を用いることで正確な診断が可能となるが、OCTスキャンのデータ処理には精度・時間・コストの観点で改善の余地がある。「ビデオゲームを楽しみながらOCT画像を処理し、AIの訓練に必要なデータセットを生成する」という画期的なソフトウェアが米国特許を取得した。
研究参加している米・南メソジスト大学(SMU)のリリースによると、制作されたオリジナルのビデオゲーム「Eye in the Sky: Defender」は、プレイヤーがゲーム内で網膜OCT画像のセグメンテーション(網膜層の区分)を行うことで、いわゆるタワーディフェンス形式のゲームが進行していく(ゲーム開発元BALANCED Media社の動画参照)。侵攻してくる異星人勢力との戦いを楽しみながら、OCT画像のデータセット作成をクラウドソーシングで行う仕組みになっている。
本研究は、人間参加型のAIシステム(HITL: Human-in-the-Loop)、あるいは人間の計算力利用型ゲーム(HCG: Human Computational Gaming)としての、洗練された好例と言える。SMU所属で、BALANCED MediaのCTOも務めるCorey Clark氏は「人と機械のコラボレーションはAI/機械学習の次のステップだ。機械学習プロセスに人の知識や直感を注入することで、それぞれ単独では不可能であったものを生み出せる」と語っている。
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