米カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)の研究チームは、脳の海馬領域において「記憶を順序立てて整理するための基本的メカニズム」と、「これを利用して将来の行動を計画する方法」を初めて明らかにした。本知見は、アルツハイマー病をはじめとする認知症の疾病理解と改善への重要な一歩となる可能性がある。
Nature Communicationsからこのほど公開されたチームの研究論文によると、ラットにおける膨大な電気生理学的データと機械学習分析手法によって、海馬ネットワークが種々の意思決定を助けるため、「自身の経験(記憶)を符号化し保存」していることを示唆する証拠を発見したとする。具体的には、5種類の匂いを様々な順序で提示することにより、その時系列関係をどのように脳が捉えているか、脳内ニューロンの発火をモニターした。研究チームはさらに、「どの細胞が発火し、どの細胞が発火していないかという、細胞の符号化を連続的に把握することで、ある意味で『心を読む』ことができる」ことを指摘するとともに、神経パターンを画像として扱うことで、ニューラルネットワークによる効果的な解析を実現したとしている。
UCIの公表によると、神経生物学・行動学のNorbert Fortin准教授は「我々の脳は、特定の経験や出来事がいつ起こったかを記録している。この能力は日常生活に大いに役立っているが、この研究が行われるまで、こうしたプロセスの背景にある神経細胞メカニズムについて、明確な見解を持っていなかった」と語り、今後の研究発展に資する重要な知見であることを強調している。
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