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2年後の認知症診断を正確に予測するAI研究

認知症の早期診断は、患者とその家族にとって早期介入と環境調整の恩恵がある。一方で、認知症の進行に対する恐れ自体にも心理的苦痛を伴うため、後に診断が覆されるような事態も回避すべきである。英エクセター大学のグループは、2年以内の認知症発症を90%以上の精度で予測できるとするAI研究を発表した。

JAMA Network Open誌に発表された研究論文によるとチームは、米国内30のメモリークリニックに通院する15,300名以上の患者データを対象とし、2年以内の認知症発症を予測する機械学習アルゴリズムを開発した。メモリークリニックの対象患者は、調査開始時点では認知症の診断には至らないものの、記憶や脳機能に問題を抱えて通院していた。機械学習モデルの開発においては、データ変数が増えるほどに高い予測精度が期待できるケースが多いが、要測定変数が増えるほどに臨床現場への導入が困難になり、結果の解釈性も損なわれる。本研究では最大258種の変数から予測力の高い6つ(衰えの臨床判断、Trail Making Test Part Bの完了時間、臨床的認知症尺度CDRから3要素[見当識、記憶、生活・趣味の障害]、自立度)にまで絞り込み、90%以上の予測精度を得ることができた。さらに本モデルは、既存の2種の認知症発症リスク推定ツールであるCardiovascular Risk Factors, Aging, and Incidence of Dementia (CAIDE)と、Brief Dementia Screening Indicator (BDSI)を上回る正確さを示した。

2005年〜2015年までの調査期間中、対象患者の約10人に1人(1,568名)が2年以内の認知症診断を受けたが、そのうち約8%(130名)については後に認知症の診断が覆された。本研究のモデルは、それら誤って下された認知症診断の80%以上を正確に診断できたため、診断精度向上に貢献する可能性も示されている。エクセター大学のリリースにおいて、研究グループのJanice Ranson氏は「機械学習モデルをメモリークリニックに組み込むことで、診断精度の格段の向上と、誤った診断がもたらす不必要な苦痛を軽減できるだろう」と語っている。

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1. 岡本 将輝
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員を経て、現在は米マサチューセッツ総合病院研究員、ハーバードメディカルスクール・インストラクター。他に、SBI大学院大学客員准教授、東京大学特任研究員など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. 杉野 智啓
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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