骨折診断支援AIソフトウェア「BoneView」 – 米FDA認証を取得

外傷性の骨折は、救急部における主要な診察項目の1つで、年間受診者の約3分の1を占めるとの試算もある。骨折の見逃しは、ERで発生する医療過誤の最大24%を占め、夕方から夜間の時間帯に発生しやすく、専門外の医師による読影や、業務疲労が影響するとされる。仏拠点の医療AIスタートアップである「GLEAMER社」は、X線画像上における外傷と骨折の診断を支援するAIソフトウェア「BoneView」を開発し、課題解決に取り組んでいる。

BoneViewは、骨折が疑われる領域を強調表示することで、そのX線画像を優先的に読影させることができる。2020年7月から2021年1月にかけて行われた臨床試験では、米ボストン大学やマサチューセッツ総合病院など米国内の複数施設から読影医が参加し、性能の検証が行われた。その結果、BoneViewのAI支援によって、骨折検出の感度が10.4%向上するとともに、患者1人あたりのX線画像読影時間が6.3秒短縮されることが示された。また、アルゴリズム単体の性能はAUC 0.97であった。これらの結果を受け、米国食品医薬品局(FDA)の承認を得たことが2日付けで発表された。BoneViewは欧州CEマークも2020年3月に取得済みで、既に13か国300以上の施設で採用されている。

臨床研究のリーダーであるボストン大学医学部放射線科教授のAli Guermazi氏は「技術の進歩にも関わらず、この20年間で放射線科医の仕事量は倍増し、さらに高い信頼性が要求されている。AI支援により、治療の遅れを回避し、患者を正しい治療ルートへと導けるはずだ」と語った。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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