救急部では多くの外傷患者に対して単純レントゲン写真を撮像するが、特に夜間帯など、放射線科読影医が不在の時間帯において骨折所見の見落としが多発することが、先行研究から明らかにされている。疲労がピークとなっている当直医にとって、解像度の決して高くない単純レントゲン画像から「淡い骨折線」を漏れなく抽出することは、非常に困難な現実がある。
米ボストン大学の研究チームは、このような骨折所見を事前にスクリーニングし、システム内でフラグを立てることで見逃しを防ぐAIシステムを開発した。放射線領域の権威ある学術誌・Radiologyに収載された本研究論文によると、システムは多施設から四肢・骨盤・腰椎・胸椎・肋骨など、全身の単純レントゲン写真から学習しており、骨折が疑われる領域を強調表示し、医療者に警告することができる。このAIシステムの支援により、骨折の見逃しを29%減少させることを検証試験では明らかにしている。
著者らは「AIは放射線科医やその他の医師の診断パフォーマンスを向上させ、効率を高めるための強力なツールになると同時に、医療機関受診時の患者体験を改善する可能性がある」と主張している。医療者にとってのセーフティネットとしてのAIシステム導入は、現場の臨床家からも受け入れられやすいため、疾患領域を問わず多様なシステムが模索されている。
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