骨粗鬆症と骨折を評価するAI研究の懸念と将来性

骨粗鬆症と骨折をAI手法によって検出・予測する研究が盛んになってきている。カナダ・マニトバ大学のグループは、これまでに示された89報の論文をレビューし、同領域の研究手法に技術的および臨床的な懸念が残っていることを示した。

著者のひとりで同大学の放射線医学教授であるWilliam D. Leslie氏は、メディアHealioのインタビューに対し「我々のレビューでは、各研究の質には大きな幅があることが観察され、用意した12点満点のチェックリストでの平均スコアは6点であった」と語る。レビュー論文はJournal of Bone and Mineral Research誌に報告された。特に各研究の大きな限界として、機械学習モデルの選択に関して報告が不完全であったり、データが不適切な分割をされていること、外部検証を行われた研究が少ないことなどが挙げられている。

研究グループは「課題は残るものの、骨粗鬆症と骨折の診断・検出に機械学習アプローチを用いることは有望である」として、共通する落とし穴を避けるために機械学習モデルの開発とその成果を報告する際には、標準化されたチェックリストの使用を奨励している。Leslie教授は「機械学習手法の進歩につれて、臨床医とAIモデルのどちらを信用すべきかというジレンマが生じていく。学習し変化していく技術をどのようにライセンスするのか悩ましい問題であり、アルゴリズムの安全性を担保する規制と承認プロセスで、信頼を確保する方法を見つけなければならない」と述べる。

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