心臓移植患者では、移植された臓器が免疫系から攻撃を受ける「拒絶反応」がみられる。拒絶反応の初期には症状が現れないことがあるのに加え、心臓生検による診断の際、専門家間でも重症度判定に一定のばらつきがみられる。このような課題に対処するため、米ハーバードメディカルスクールの研究チームは「心臓拒絶反応評価AIシステム(CRANE: cardiac rejection assessment neural estimator)」を開発している。
ハーバード大学の発表によると、CRANEのAIモデルはブリガム・アンド・ウイメンズ病院で採取された1,300件以上に及ぶ「心臓生検の病理画像」を用いてトレーニングされた。モデルの検証結果では、拒絶反応検出・サブタイプ分類・グレード分類において従来の評価手法に劣らない性能を示し、観察者間の評価のばらつきを低減し、評価時間の短縮を実現した。最新の研究成果はNature Medicineに掲載されている。
同大のインタビューに対し、研究を担当するブリガム・アンド・ウィメンズ病院の病理学講座助教であるFaisal Mahmood氏は「医学の歴史において、診断と評価の大半が主観的なものであった。しかし、演算ツールのパワーによりその歴史が変わり始めている。臨床の専門家と、コンピュータサイエンスの専門家が共になり、事態をシフトする時が来た」と語っている。
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