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パーキンソン病患者を識別するAI嗅覚システム

パーキンソン病(PD: Parkinson’s Disease)は、震戦・硬直など運動障害を主症状とする中枢神経変性疾患の代表格である。その診断には、発現症状に基づく各種評価尺度が用いられるに留まっており、血液や脳脊髄液などの生体試料から診断するバイオマーカーはいずれも研究段階で確立していない。「PD患者の皮脂に含まれる揮発性有機化合物(VOC: volatile organic compounds)が健常者と異なる匂いを持つ可能性」が先行研究で示され、PD診断手法にユニークなアイディアをもたらしている。

中国・浙江大学の研究チームは、患者の皮脂サンプルから放出されるVOCに対して、ガスクロマトグラフィと表面弾性波センサーを組み合わせたAI嗅覚システム(AIO: artificial intelligent olfactory)で解析し、PD患者を判別する研究を行っている。ACS Omega誌に収載された同システムに関する研究成果によると、PD患者31名と健常者32名の臨床データに基づき、皮脂からのVOCを解析する機械学習モデルをトレーニングした。結果、3種の匂い成分(オクタナール・酢酸ヘキシル・ペリルアルデヒド)でPD患者を有意に識別し、感度91.7%および精度70.8%というモデルパフォーマンスを示していた。

「AI嗅覚(AIO)」および「電子の鼻(e-nose)」については、潜在的な血中バイオマーカーと比べて精度が落ちる可能性があるものの、「非侵襲的」という大きな利点が多くの研究者を惹きつけている。

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1. 岡本 将輝
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員准教授など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. 杉野 智啓
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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