がん患者の約10%に脊椎への転移があり、これに伴う脊椎の「病的骨折」は強い痛みや運動制限につながる。病的骨折に至る転帰を予測することは、より良い治療意思決定において重要な役割を果たす。脊椎の「デジタルツイン」を作成することで、がん転移による脊椎骨折を予測するAI研究を、米オハイオ州立大学のチームが進めている。
International Journal for Numerical Methods in Biomedical Engineeringに収載された同研究では、解剖検体から採取された椎骨のMRIおよびCT画像から、ReconGANと呼ばれるAI支援フレームワークをトレーニングし、実際の患者において「椎骨の微細構造を正確に再現するデジタルツイン」の作成手法が解説されている。このモデルを用いたシミュレーションにより、がん患者における椎体骨折リスクを個別に予測することができる。また、がんによって椎骨の一部がどの程度強度を失うか、がんの進行に伴う変化などもシミュレート可能であるとする。本研究論文では、肺がんが骨転移を来した51歳女性患者での適用事例も紹介している。
オハイオ州立大学のインタビューに対し、本論文の著者で機械/航空宇宙工学部准教授のSoheil Soghrati氏は「脊椎骨折は患者の死亡リスクを約15%増加させるため、骨折の転帰予測は、より良い治療戦略設計と患者意思決定に寄与する。究極の目標は、手術症例すべてにデジタルツイン技術を持ち込み、評価する環境を構築することだ」と述べている。
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