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自律型医療AIが「温室効果ガスの排出」を削減する可能性

現実世界におけるエネルギー生産手法の構成に基づくと、年間の温室効果ガス(GHG)排出量の最大10%が、医療プロセスおよび医療サービスによるものと考えられている(参照論文)。米ジョンズホプキンス大学などの研究チームは「自律型医療AIの導入がGHG排出を削減する可能性」を調査し、このほど研究成果を公表した。

12日、npj Digital Medicineから公開されたチームの野心的研究論文では、ポイントオブケア診断に自律型AIを導入することで達成できる「GHG排出削減の可能性」を推定している。具体的には、糖尿病患者に対する眼科検診(糖尿病性網膜症スクリーニング)において、検査から診断までを自動化する自律型AIシステム導入について、眼科医による従来手法と比較した場合のGHG排出量を算出した。詳細なGHG排出推定により、対面での糖尿病眼科検査と比較して、自律型AIによる眼科検査は「約80%のGHG削減」を達成できると、チームは結論付けている。

デジタルヘルスの拡大は、医療職や患者の移動を有意に抑制することを通し、GHG削減に資する可能性がこれまでも指摘されてきた。一方、医療AIの臨床導入自体がGHG削減に貢献する可能性について調査した研究はまだ無く、チームが明らかにした示唆的研究成果には大きな関心が集まっている。ただし、ケアエピソードに関連するGHG排出や、AIシステムの設計・開発に起因する排出、眼科医の教育・トレーニングに伴う排出、など現実的に存在する主要な排出要素が本研究では考慮されていないため、今後のさらなる研究知見の集積が望まれている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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