不眠症に対する薬物療法は「依存形成」などの課題があり、医療経済的なデメリットと併せて、英国民保健サービス(NHS)では代替治療法が模索され、そのひとつに「デジタル認知行動療法(CBT-I)」がある。英Big Health社のAIアプリ「Sleepio」は、不眠症患者の思考・感情・行動を特定するセッションを経て、個人の睡眠に対する認知を改善し、健康的な睡眠習慣を促進する効果をもたらすという。
NHS傘下の公共機関「NICE: National Institute for Health and Care Excellence(英国立医療技術評価機構)」は、不眠症デジタル治療の選択肢としてSleepioを推奨する「NICE guidance」を同領域で初めて付与したと公表している。NICEの医療技術諮問委員会は、不眠症患者を対象としたSleepioの臨床試験(12件の無作為化対照試験を含む28件の研究)をエビデンスとして評価した。それらの試験では、不眠症患者の76%に臨床的改善効果が達成されるなどの結果が示されている。また、NHSにおける医療コスト削減の選択肢になると、当局からの結論が下された。
Big Healthの共同設立者でチーフサイエンティストのColin Espie氏は「Sleepioが厳格な評価を経て、NICE guidanceを受けた初のデジタル治療となったことを嬉しく思う。過去2年間、メンタルヘルスに対する需要が急増し、大規模展開可能で臨床効果が証明されたデジタル治療が対抗策として求められていた。今回の重要なステップは、NHSにおける不眠症患者の滞留を減らし、この技術を必要とする全ての人が支援を受けるのに役立つだろう」と述べた。NHSイングランドにおけるSleepioの提供は準備段階で、現在はNHSスコットランドに属する全成人が利用可能な状況にあるとのこと。
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