イヌのレプトスピラ症を早期診断するAI研究

人と動物に共通する感染症(人獣共通感染症)のひとつに「レプトスピラ症」がある。病原性レプトスピラは細菌で汚水や尿中に生息し、経皮・経口的に感染することでレプトスピラ症を引き起こす。身近なペットであるイヌにおいても、重症例では「腎不全など致命的な病態」の引き金となることから重要疾患に位置付けられる。早期発見により、レプトスピラ症に感染したイヌの9割が良好な経過をたどるが、診断法のひとつである「血清抗体検査」は感染初期に感度が低く、診断確定までに数週間を要することもある。

カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)のグループは、イヌから採取した血液検体からレプトスピラ感染を識別するAIモデルを開発している。同AIモデルの最新の検証結果は、Journal of Veterinary Diagnostic Investigationに報告された。本研究では、UC Davisの獣医学部病院で治療を受けた53頭のイヌにおいて開発したモデルを適用したところ、レプトスピラ陽性であった9頭を全て正しく識別できた(感度100%)。一方、陰性であった44頭についても約9割を正しく陰性と識別した(特異度90.9%)とする。

同研究グループは、イヌのアジソン病を予測するAIモデルを以前にも発表するなど、この分野をリードしている(過去記事)。レプトスピラ症はヒトにおいても早期診断が難しいケースがあり、グループでは研究成果の「ヒトへの将来的な臨床応用」を期待している。

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