医療AI開発と社会実装への市民参加

医療AIの研究開発と社会実装を巡る意思決定に「一般市民を参加させる必要性」について、科学コミュニティ、各国政府、政府間組織の間でコンセンサスが得られつつある。英国の事例に焦点を当て、医療AI研究に対してどのようにこれを実現できるかを問う、新しい研究論文がオックスフォード大学の研究チームから公表された。

Research Involvement and Engagementから公開された研究論文によると、現在英国における医療AI研究のパブリックガバナンスは、1. 研究倫理審査委員会やデータアクセス委員会への一般市民の参加によるもの、2. 患者・関係者団体を通したもの、3. 市民陪審や市民パネル、市民集会など市民フォーラムと呼べる種の民間プロジェクトによるもの、など主に3つの方法によってなされているという。これらの取り組みは医療AI研究のモニタリング上、互いに補完的な長所・短所を有する一方、現状ではそれぞれの横断的な情報伝達が不十分であるため、その「補完性」が十分に発揮されていない。著者らは、これらのアプローチを統合したマルチスケールモデルを提案することで、市民参加効果を相乗的に最大化できる可能性を指摘している。

医療AIが広く社会的に受け入れられ、効果的に活用されるためには、基礎となる医療AI研究の信頼性をさらに高めることが求められており、有効な市民参加手法の確立によって「AI関連研究およびビッグデータ利用の加速」を見込むことができる点を強調している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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