救急部における画像解析AI利用の価値

救急診療部における画像解析AI利用は、1. 診療スピードの加速、2. 同時処理可能な患者数増加、3. 診断品質の均質化、などの観点から、特に導入効果の高いものとして注目を受ける。米イェール大学の研究チームはこのほど、救急画像診断へのAI導入に関する可能性・効果・課題についてをまとめたレビュー論文を公開した。

Clinical Imagingから公表されたチームのレビュー論文によると、米食品医薬品局(FDA)が承認済みであるAIシステムには、救急診療部が実臨床で即時に使用可能で、かつ導入効果が十分に見込まれるものが含まれていることを指摘する。救急の現場における読影作業は、限られた時間の中で手作業中心のものであったため、救急医・放射線科医・診療放射線技師に対する負荷が過大であり、時として品質の担保が困難となるケースもあった。救急領域における「AIアプリケーションの主要なターゲット」は現在、急性期の脳卒中であるとしており、実際、これら疾患へのAI活用は、数分の遅れが著明な予後の増悪につながり得る状況を効果的にサポートし、ケアチームの対応能力を増強することを強調する。

現時点で「画像解析AIへの直接的な保険償還は依然として稀であること」が課題の1つとして挙げられるが、周辺領域には償還可能なアプリケーション例がみられるようになり、画像解析AIの取り扱いが大きく変わる状況も遠くないことを指摘する。AIの導入効果がコストに見合うものなのか、医療機関の意思決定者は慎重に評価する姿勢をみせるなか、風向きは少しずつ変わろうとしている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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