音による疼痛緩和

米国国立歯科頭蓋顔面研究所(NIDCR)などを中心とする国際研究チームは、「音によって痛みが軽減される神経機構」をマウスにおいて明らかにした。非薬物の新たな疼痛治療法の開発に結びつく可能性があり、大きな注目を集めている。研究成果はこのほど、Scienceから公開された。

チームの研究論文では、前足に炎症を起こしたマウスに対し、「心地よいクラシック音楽」「同曲の不快なアレンジ曲」「ホワイトノイズ」という3種類の音に曝露させ、その反応を調査している。結果、これら3種類の音は全て、囁き声程度の低い強度で流した場合、マウスの疼痛感受性を有意に低下させることを明らかにした。音のカテゴリーに左右されることなく、特定の音強度によって疼痛緩和を誘導できる一方、同じ音をより強く鳴らしても反応変化は観察されなかった。研究論文では、この背景にある潜在的な神経学的機序までを特定しており、同種の脳内プロセスが人間にも存在する場合、疼痛治療が根本的に変革される可能性を持つことになる。

マウスによる検証段階である一方、本研究知見が示すインパクトは多大で、音楽療法を始めとする「音ベースの代替療法」の可能性を押し広げている。以前に紹介したカナダ・LUCID社は、「楽曲の音楽的特徴からメンタルヘルスの改善」を狙うAIツール開発を手がけているが(過去記事参照)、「疼痛緩和を主題とした音楽療法ツール開発」もまた検討の余地があるテーマとなるかもしれない。

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1. 岡本 将輝
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員准教授など。専門はメディカルデータサイエンス。

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防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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