銃器売買データから自殺リスクを予測

カリフォルニア大学デービス校の研究チームは、拳銃の取引データから「銃器による自殺」を予測する機械学習モデルを構築した。JAMA Network Openからこのほど公開された研究成果は、リスク層別化に基づく標的型介入に利用できる可能性を示唆している。

研究では、1996年から2015年にかけて190万人超で観察された約500万件の拳銃取引について、カリフォルニア州の販売店記録(DROS)データベースを活用したモデル構築を行なっている。DROSデータベースには、購入者のIDや住所、取引日時、販売者のID、銃器の口径、種類、メーカー、モデル名などが含まれている。データ内での「拳銃購入後1年以内の銃器自殺」は、全取引数の0.07%(3278件)にみられた。銃器自殺リスクを予測するランダムフォレストモデルは、検証データセットにおいて、実際の銃器自殺の約4割を「最高リスク」と評価することができたほか、リスクスコアが特に高い群においては、実に3分の2以上で1年以内での銃器自殺による死亡を認めていた。

個人レベルの銃器取引記録の大規模な機械学習分析は、本研究が最初となる。結果的に自殺予防のための高リスク者特定における有効性が示唆されており、著者らは「今後は銃器自殺と強い関連を持つ銃器特性、および個人・コミュニティの特性把握が欠かせない」として、さらなる研究継続を明確にしている。

関連記事:

  1. AIによる「自殺リスクスクリーニングの予測精度向上」
  2. AIと対面型スクリーニングを組み合わせた自殺リスク予測
  3. 自殺リスクのリアルタイム予測モデルは臨床現場で性能を発揮するか?
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事