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米軍のPTSD薬物治療プログラムを支援するAIプラットフォーム

米軍の現役軍人・退役軍人のいずれにおいても、軍務を経た心的外傷後ストレス障害(PTSD)が課題となってきた。PTSDは社会的・経済的・精神的負担が大きいにも関わらず、米食品医薬品局(FDA)の承認した治療薬はパロキセチンとセルトラリンのわずか2種と、治療オプションに乏しい現実がある。PTSDの薬物治療プログラムを前進させるため、AiCure社は米国防保健局(DHA: Defense Health Agency)と連携し、「AIプラットフォームに基づく軍人に対する個別最適化PTSD治療」の構築と評価を行うことを公表した

展開されるPTSD薬物治療プログラムは、12週にわたって各治療レジメンの効果を評価するもので、服薬遵守を指導するプラットフォームと、患者の治療反応を捉えるデジタルバイオマーカー技術から構成される。本プログラムでは、患者の音声および映像データをデジタルバイオマーカーとして取得し、感情表現や身体活動、会話パターンの変化を検出する。その結果、患者ごとでの適切な治療プロセスの特定、治療効果が乏しい際のタイムリーな臨床医による介入、などを可能とすることが期待される。

AiCure社のCEOであるEd Ikeguchi氏は「個々の患者ニーズに合わせたPTSD治療は今日まで最大のアンメットニーズのままだが、AIが精密医療を推進する可能性を秘めている。本プログラムによる革新的な試みは、『数十年間ほぼ停滞したままのPTSDケアの筋書きを書き換える』という我々の志を示すものだ」と語った。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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