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臨床ルーチンデータからPTSD発症リスクを推定する機械学習モデル

心的外傷後ストレス障害(PTSD)を予防するためには、誘引となるイベント後の「初期フェーズ」で早期介入を行うことが重要となる。米コロンビア大学やニューヨーク大学などの共同研究チームは、外傷後48時間以内の臨床データからPTSD発症リスクを推定する機械学習モデルを構築した。

Neurobiology of Stressに収載されたチームの研究論文によると、2所の大学病院レベル外傷センターで治療を受けた417名の患者データから、この予測モデルを導いたという。外傷後48時間以内のバイタルサインや薬物治療状況、患者属性、外傷の程度などから、その後12ヶ月でのPTSD発症を予測するため、アンサンブル学習のひとつであるXGBoostを用いたモデル構築を行った。最良のモデルはAUC 0.89でPTSD発症を識別しており、長期のPTSDリスクが外傷後48時間以内の臨床ルーチンデータから高精度に予測できることが示唆された。

研究チームは、この研究成果がPTSD発症予防に向けたターゲット因子の明確化につながること、およびPTSDの複雑な病因解明への洞察を提供する点を強調している。精神科疾患領域へのAI活用は、データアプローチによるメンタルの定量評価を実現する可能性があり、近年大きな注目を集めている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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