細菌を用いた薬剤運搬ロボット

世界最高峰の学術研究機関の1つとして数えられるドイツ「マックスプランク研究所」の科学者らは、薬剤を搭載した細菌ベースのロボットである「バイオハイブリッド型マイクロロボット」の開発に成功したことを明らかにした。ロボット工学と生物学の融合によるこのアプローチは、がん組織選択的な高度標的治療への新たな道筋を示すものとして注目を集めている。

マックスプランク研究所の公表によると、チームは大腸菌に対して、人為的に複数のパーツを搭載することでこのマイクロロボットを構築している。各細菌には数個のナノリポソームを付着させており、球状のキャリアとして機能するこのパーツには、外周部に近赤外線を照射すると溶ける物質を封入、さらに中央の水性コアには水溶性の治療薬を格納する。また同時に、細菌には磁性ナノ粒子を取り付けており、磁場にさらすことで運動能力の高いこの微生物に対する「オントップブースター」として機能する。これにより、細菌の「泳ぎ」をコントロールすることが容易になり、生体内の特定箇所に正確に誘導することを可能とする。

大腸菌は、液体から粘性の高い組織に至るまで、様々な物質中を泳ぎ回ることのできる高速で万能な生物と言える。研究チームのBirgül Akolpoglu氏は「このような細菌ベースのマイクロロボットを、がん患者の体内に注入することを想像して欲しい。磁石を使えば、粒子を腫瘍の方向に正確に誘導することができる。マイクロロボットが腫瘍を十分に取り囲んだ段階で、その組織にレーザーを照射することで薬剤を一気に放出できる」と述べ、当該技術ががん治療を革新する可能性を強調している。

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1. 岡本 将輝
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員准教授など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. 杉野 智啓
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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