心房細動は脳梗塞リスクを高める不整脈の一種で、世界的には65歳以上高齢者の4人に1人が罹患するという。心房細動には無症候の患者が多いため、限られたスクリーニング機会で見過ごされたまま、脳梗塞をはじめとする重篤な転帰に至る例が後を絶たない。イスラエル発のスタートアップ「Cardiokol」は、電話越しの音声から心房細動を検出するAI技術によって課題の解決を図ろうとする。
Cardiokolのソフトウェアは、1日2回、電話中またはデジタル音声アシスタントとの会話中に、数秒間「あー」と発したユーザーの声を解析し、心房細動の疑い患者にフラグを立てるというもの。基礎原理は「胸腔内の心臓は肺や気道に密接しており、心臓の収縮が声帯を通る空気の流れを力学的に変化させるため、音声信号のスペクトル特性に影響する」ことに基づく。同社の特許技術は、固定電話・スマートフォン・スマートスピーカーなどあらゆる音声機器に対応する。これまでの研究成果は、European Heart Journalや、Journal of Cardiovascular Electrophysiologyに発表されてきた。
Cardiokolの「kol」はヘブライ語で「声」を意味し、同社では先端のウェアラブル機器などには馴染まない高齢者にとっても扱いやすい「電話音声」を選択しており、頻繁にモニター可能で費用対効果の高い手法を志向している。Cardiokolの技術はまだ検証段階にあるが、今後は「あー」といった特定の音声からではなく、「通常の会話」からの検出を見据えた技術の拡張を続けている。
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